しがないマーケターの戯言

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なぜ人はクチコミをするのか|クチコミの科学

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インターネット、そしてTwitterや Facebookなどのソーシャル・メディア(SNS)上で個人が簡単に発信できるようになってから、“クチコミ”は企業のマーケティングにとってさらに重要なものになった。

この記事では、「なぜ人はクチコミをするのか」という問題について、整理したい。この記事は、論文「クチコミの促進要員に関する先行研究の整理と今後の研究課題(臼井浩子)2014年」を参考にしている。この論文では、多くの先行研究から「クチコミの動機」についてまとめているので、その一部を紹介したい。(各項目の説明は、直接の引用ではなくブログ筆者の解釈を元に書いています)

オンライン上でのクチコミの動機

感情の発散(製品関与)

商品・サービスを購入した際に、感じたポジティブ・ネガティブな感情の発散。消費者自身が持っていた事前期待を超えた消費体験がある場合は、その感動を誰かに伝えたくなる。そしてその逆もまた然り。事前期待より実際の消費体験が良くなかった場合は、ネガティブな感情を誰かに伝えたくなる。企業にとって最も重要なクチコミの種類ではないだろうか。

自己高揚(自己関与)

「自分はこんな専門性を持っている」「自分はこんなに素敵な買い物をした」ということを他人に見せ、注目を浴びたいという動機から来る場合。インフルエンサー的に何らかのノウハウを発信したり、いわゆる“インスタ映え”を狙った投稿はこの動機に影響を受けていると言える。

他者への配慮(他者関与)

純粋に他者への手助けとして、購入の意思決定を助けたいという動機。他の消費者が良い意思決定をしたり、悪い意思決定を防ぐための手助けとなる。感情的なものではなく客観的に商品・サービスを比較して発信される。「製品関与」「自己高揚」と動機が重なる部分もあると思う。また、他の消費者に対してだけではなく、良い商品を提供してくれる企業に対して報いたいという動機もここに含まれる。その場合はかなりファン度が高い場合となる。

 

このように、製品関与、自己関与、他者関与という3つのカテゴリーが、企業のマーケティング活動に影響の強いクチコミの動機だ。さらに以下で紹介するものには、上記で紹介した3つの主な動機の派生的なものや、インセンティブ目的など純粋な動機以外のクチコミも含まれる。

 

メッセージへの興味(メッセージ関与)

広告やその他のマーケティングメッセージについて議論する場合。これは職業柄、個人的には僕もよくやる。日常生活の中で良い広告や共感を持てない広告があれば、感想を添えてSNSに投稿する場合などだ。近年、SNS上で「炎上」する広告が時折見られるようになった。例えば、Twitter上で話題となり注目を集めていた「100日後に死ぬワニ」という漫画のコンテンツは、連載終了と同時に多くのグッズ商品などの広告が打たれ、それまでコンテンツ自体に共感・感動していたユーザーからの猛烈な批判を受け炎上した。このように、企業のマーケティング活動は、ネガティブなクチコミの対象となってしまうことが今では珍しくない。

不確実性の低減

商品・サービスの中には「不確実性」の高いものがある。特に、例えば学習塾、英会話やヨガ、その他習い事や学習に関するサービス。もしくは、保険サービスや旅行、ホテルなどのサービスは、無形であるので実際に自分が経験してみないとわからないことが多い。このような種類のサービスを「経験財」と呼んだりもする。このような不確実性の高いサービスのクチコミは、比較的消費者からのニーズが高い。特に高額商品の場合は「失敗したくない」という思いが強くなるのでなおさらだ。これはクチコミの発信というよりは、クチコミの探索に対する動機だ。

アドバイス探索

クチコミは、購入前に起こるものばかりではない。購入後に、取り扱いや使い方、修理などのアドバイスに対するニーズがある。このような購入後ニーズに対して発信されるクチコミも存在する。

不協和の低減

購入後に起こるその他のクチコミ探索に対する動機として、「自分の意思決定が正しかったことを確認したい」という心理がある。ある商品・サービスを購入することを様々な選択肢から迷って購入した場合、「やっぱり別の選択の方が良かったかもしれない」という不安や葛藤(認知的不協和)を感じることがある。これを払拭し、自分を納得させるために、購入の意思決定後にクチコミを探索するという行動が起こる。これは、認知的不協和の低減、と呼ぶことがある。

経済的インセンティブ

発信者が経済的なインセンティブを得るためにクチコミをインターネット上に書き込む場合もある。代表的なのは、自分が書いたブログ記事経由で、読者がその商品・サービスを購入した場合、そのブログの筆者に報酬が発生する「アフィリエイト」だ。他にも、SNSでフォロワー数の多い人、いわゆるインフルエンサーに企業が直接依頼をし、そのアカウントで商品を宣伝してもらうことで、報酬を支払ったり、報酬の代わりとなる商品を提供することがある。こういった動機でのクチコミ発信も現在では珍しくない。

 

以上、クチコミマーケティングの研究より、オンライン上でのクチコミの動機について紹介した。クチコミ・マーケティングに関するおすすめの書籍は以下をご参照。

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