この記事では、日本人と中国人のクチコミに受ける影響について、独自の定量調査を踏まえて考察する。
前回の記事で、中国人消費者にとってクチコミの重要性がどのようなものかを整理した。集団主義的であり、面子文化を重んじる中国人にとって、他国民よりもやはりクチコミが特別な意味を持つ可能性は高い。中国市場でビジネスをする企業がこぞってキー・オピニオン・カスタマー(KOC)やキー・オピニオン・リーダー(KOL)のライブコマースをマーケティング戦略に組み込むのはそのためだ。
アメリカ人と中国人のクチコミ特性の比較
上記の記事で紹介したように、Su-Chuan and Sejung (2011)の研究では、個人主義的特性の強いアメリカ人と、集団主義的特性の強い中国人を比較すると、中国人ユーザーの方が、ソーシャルメディア上での情報探索行動、情報発信行動、情報伝達行動がより活発であることが明らかにされた。
また、同研究では、アメリカ人ユーザーよりも中国人ユーザーの方が、ソーシャルメディア上でのユーザー同士の繋がりが強く、ソーシャルメディア上の情報をより信頼し、よりその情報に対して影響を受けやすいということを指摘した。
では、同じく集団主義的であるとさえる日本人と中国人の間にはクチコミに対する認識の違いがあるのだろうか。ホフステードの指標によると、日本人はアメリカ人より集団主義的だが、中国人よりは個人主義的だ。だから、やはりインターネット上の行動において、中国人の方が日本人よりもクチコミに敏感であることが予想される。
日本人と中国人に対するアンケート調査
中国人と日本人のクチコミ特性の違いを明らかにするために、Su-Chuan and Sejung (2011)の研究を参考に、アンケート形式で日本人および中国人の消費者にインターネット上で、ソーシャルメディア上での認識について回答を求めた。アンケートの質問内容は各項目に対して7点リカード尺度(「1:全く同意しない」から「7:とても同意する」までの7段階)によって測定した。
*アンケート対象者は、GMOリサーチのモニターである、20歳から50歳の日本人210人、中国人213人、合計423人
<設問項目>
- 商品・サービスを購入する時、SNS上で誰かに意見を聞きたい(クチコミ探索意向)
- 購入する商品・サービスを選ぶ時、SNS上の意見は重要である(クチコミ参考意向)
- 商品・サービスを購入した自分の感想を、SNSに投稿することがある(クチコミ発信意向)
- SNS上の商品・サービスに対する他人の感想を、自分の友人や家族に共有することがある(クチコミ共有意向)
アンケート調査結果
この定量調査において、ソーシャルメディア上での行動についての設問の回答結果は上記の通りである。クチコミ探索意向、参考意向、発信意向、共有意向4つの観点において、中国人回答者の回答結果の平均値は、日本人の回答結果を大きく上回った。
つまり、中国人の方が日本人よりもソーシャルメディア上でより情報を探し、参考にし、より発信し、家族や友人にシェアする意向が高いと考えられる。やはり中国市場でのマーケティングにおいて、クチコミの重要性は切り離して考えられない。
その他参考文献は以下をご参照。