しがないマーケターの戯言

読んで学んで、物を書/描く。

「選択できる自由」がなぜ重要なのか

「選択できる自由」がどのくらいあるかで、幸福度が決まると思う。当たり前だと思っていた自由を奪われて初めて、その重要性に気づくものだ。2022年4月、僕は上海のロックダウンの真っ只中でそれを実感した。

食べ物の自由

前回の記事でも書いたが、上海のロックダウンで特に問題視されているのが、生活必需品、特に食料が入手困難になったことだ。僕が住んでいるマンションでは、幸運にも致命的に食料が不足するということは今のところない。ただ、やはり自分が欲しいものは必ずしも手に入らないし、自分で作ったお粗末な料理とインスタント食品続きだと嫌気が差してくる。

今思えば、中国入国後の2週間のホテル隔離生活でも同じような経験をした。隔離ホテルでは、3食きっちりと食事が出てくる。すごく美味しいものではないが、まあ、個人的には十分食べられるクオリティだった。それでも、自分でメニューを選べるわけでもなければ、毎日毎日同じような食事が出てくるのはなかなかストレスフルだった。ホテル隔離が終わり、自分が食べたいものをデリバリーして食べた時の開放感はたまらなかった。

行動範囲の自由

そして何よりも行動範囲を自分で選択できないこと。僕自身はインドア派な人間なので、部屋に引きこもること自体はそれほど苦ではない。むしろ部屋で自分でもくもくとやりたいことは山ほどある。そんな自分でも1ヶ月以上も自宅隔離を強いられるとなかなか辛くなってくる。「外出して良い状況」で自ら「外出しない」という選択をすることと、それを強制されることでは大きく違うのだ。

今回のロックダウンに限らず2020年のコロナ発生以降、日本への帰国が制限されている状況も同じだ。「帰国しない」ことと「帰国できない」ことは天と地ほどの差がある。それほど、人にとって自分で選択する自由を持つことは重要なのだ。

働き方の自由

実は、この「選択できる自由」の重要性はキャリアや働き方に対しても大きな意味をもつ。あるキャリアに関する研究では、自分のキャリアに対して「いくつかの選択肢の中から自分で決定した結果、今がある」という実感の有無が、幸福度の大きな要素であることが明らかになった。それは、年収額や学歴よりも、大きいということだ。

これは日頃の働き方に対してもそうだ。上司に言われたことをやっているだけの状況では幸せは感じようがない。自分で試行錯誤しながら、目標に向かって行動している時は、多少残業が多かったとしても精神的なストレスが少なく働けていたという経験はないだろうか。ただし、スタッフが自分で選択したやり方で働けている、と実感するには管理側(つまり上司)と管理される側(自分)の両方の状況が影響する。管理側が、自分のやり方や意見を押し付けるばかりだと当然だがチームメンバーのモチベーションは下がる。一方管理される側も、ただ上の意見を聞いておけば良いというスタンスでやっていると、自分を苦しめることになってしまうのだ。

 

生活も仕事も、「選択できる自由」がどのくらいあるかで、幸福度が決まるのだ。