しがないマーケターの戯言

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上海ロックダウンの何がヤバイのか

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2022年4月、今ここ上海は、歴史に残るであろう「ロックダウン」に見舞われている。

 

ゼロコロナ政策を貫く中国では、一人でも感染者が発見されるとその人が過去2週間以内に訪れたレストラン・商業施設が封鎖される。濃厚接触者も施設またはホテルで隔離されることになる。

そんな日本では考えられない非常に厳しい対策により、これまでほぼコロナウイルス感染者ゼロを続けていた上海で、今年2月から急に多数の感染者が確認されるようになった。そこら中で多くの施設が封鎖されるようになり、中では出社中の会社オフィスが突然封鎖され、2週間をオフィスで過ごさざるを得ないようなケースもあったようだ。

それでも感染者数の増加が止まらず、3月末、突然政府から上海全域をロックダウンするという発表が交付された。東側地域は3/28から、西側地域は4/1から正式にロックダウンが始まり、そして2500万人の上海市民一斉PCR検査が始まった。(東京都の人口は約1400万人であり、比較するとその対策のスケールの巨大さがよくわかる)

コロナウイルスが世界中で拡大し始めた時、多くの国でもロックダウンか、それに準ずるような政策がとられた。日本でも緊急事態宣言が何度か発表されたが、なぜ世界中が今回の上海ロックダウンに注目し、騒いでいるのか、そのヤバさについてまとめたい。(ただこれは、政治経済的な観点からではなく、あくまでも一上海の住人の目線で、自分自身の個人的な経験と、日頃コミュニケーションをとっている上海在住の同僚や知人の話を元に書いた内容であることはご了承いただきたい)

 

完全な外出禁止とライフラインの停止

まず、日本の緊急事態宣言等の対策と根本的に異なるのは、飲食店の営業停止などのレベルではなく、政府から特別な許可を得た人以外は基本的に1歩も外出を許されない。PCR検査の際は、検査スタッフが各マンションを訪れ、マンションの敷地内で行われる。(その時だけ外出できる)

その徹底的な封鎖処置により、飲食店はもちろん、日常生活のライフラインであるスーパー、コンビニ等のお店も通常の営業をしていない。正常時はデリバリーサービスが非常に盛んで便利な上海だが、通常のサービスはほぼ利用できない。つまり、食料や水が手に入らない。この絶望的な状況に、最初はロックダウン前に買いだめしたものでやりくりしていた上海の住人たちも、そのストックが尽き始め、不満が爆発している。

ただ、完全に物流がストップしているわけではなく、大口の発注だけをかろうじて受注して発送している業者がある。(例えば最低5万円以上の発注など)なので、マンションの住人たちでグループチャットを作ってそこで共同購入する形で物資をなんとか補充しているという現状だ。

 

終わりが見えないエンドレス感

次に上海の市民の心を削っているのが「終わりが見えないエンドレス感」だ。元々の上海市政府の発表では、ロックダウンは4日間とされていた。しかし、その後解除されることはなく、結局4/16現在もほとんどの地域で状況は好転していない。

4/9の時点で、PCR検査で陽性者がゼロの各マンション群から解放するという発表があったが、実際に解放されているマンションはごくわずかな上、マンション群(日本でいうと団地のような規模の大きいものを想像してもらったほうが良いと思う)で陽性者が1人でも出れば隔離期間が14日間延長されていくので、住人の数が多く、感染者が出続けているマンション群では解放が絶望的な状況になっている。

僕が住んでいるマンションはホテル型の小規模マンションなので、住民の数が少なく陽性者も長く出ていないが、それでもいつ解放されるのかはわからず終わりが全く見えない状況だ。

 

劣悪な感染者隔離施設の存在

もう一つ、上海市民の感染への恐怖を煽っているのが、「方舫」と呼ばれる隔離施設への搬送だ。上海でコロナウイルスの感染が確認されると、この隔離施設へと強制搬送されるのだが、この施設の環境が非常に劣悪であるとSNS上で噂されている。

広い体育館のような場所に、ただ大量にベッドが並べられ、男女関係なく、プライバシーも保証されない施設で、何日も過ごさなくてはならないようだ(真偽は定かではないがシャワーも浴びることができない場所があるらしい)。最近はこの隔離施設の収容人数がパンクしてしまい、陽性者がマンションの自宅に放置されるケースも多いらしいので、これは逆に不幸中の幸いとも言える。

 

積もる不信感

僕の中国語の先生は上海に住む根っからの上海人だ。その先生とオンラインで話していると、かなりストレスがたまっていることが容易にわかる。上記の状況を受けて、失望したということを何度も言っていた。

上海は今や世界の中心とも言える大都市だ。IT化の発展が目覚ましく、世界の先進国を凌駕するビジネスがうずめくクールな都市だ。コロナ発生後も徹底的なゼロコロナ対策で市民は制限がありつつも、快適な生活を送ってきた。そんな上海で、食糧難に遭遇するなどと誰が想像しただろうか。社会主義国のここ中国では、本当の意味での市民の自由は存在しない。そう思わざるを得ない状況になってしまったことは非常に残念だ。