しがないマーケターの戯言

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"インフルエンサー離れ"する中国の若者たち|中国マーケティング

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中国では日本のそれ以上にインフルエンサー・マーケティングが盛んであることは今となっては有名だ。KOL(キー・オピニオン・リーダー)やKOC(キー・オピニオン・カスタマー)とも呼ばれる彼らは、自身のSNSアカウントやそれに紐づく直播(ライブ映像)で様々なおすすめ商品やサービスを紹介し、企業はこぞってそれを利用しようとしている。中国人は他国以上に“クチコミ”を信頼する文化背景があるため、企業の直接的な広告よりも、消費者の代表としてのインフルエンサーによる情報の方が信頼される、とも言われている。

しかし、その状況も少し変わりつつあるのかもしれない。先日、中国人の同僚(20代半ば)が朋友圈(WeChatのタイムライン)にシェアした1つの記事を見てそう思った。

その記事はこちら。「年轻人开始反“种草”」

タイトルを意訳すると、「若者たちが“反インフルエンサー”になり始めた」と言う感じ。

“种草”は、直訳すると「草を植える」だが、今の中国のでは、「インフルエンサーのクチコミ情報等によっておすすめする」と言うような意味で広く使われている言葉だ。

この記事によると、インフルエンサーのクチコミに「騙された」と感じるケースが、特にこの国慶節の旅行をきっかけにさらに増えたという。

現在このコロナ禍は、中国国内では安定しているものの、簡単には海外へ旅行に行けない状況が続いている。中国内のインフルエンサーたちは、国内の旅行先として多くの観光地を紹介しているのだが、数多くの有名な観光地の「代替場所」が存在している。ある調査によると、中国内には少なくとも62の場所が「(中国版)京都」、61の場所が「(中国版)鎌倉」として紹介されているらしい。

この21年の国慶節の大型連休でも、多くの中国人消費者がインフルエンサーの意見を参考にし、つまり“种草”され、国内旅行先を決めた。その中で、実際に旅行先を訪れた多くの中国人が期待と現実でギャップを感じ、「インフルエンサーに騙された」と感じたというのだ。

現在の中国市場のマーケティングにおいて、こんな公式があると言う。

小红书(RED)での5000の投稿

+ 知乎(疑問解決アプリ)での2000の回答

+ 李佳琦と薇娅(中国のトップインフルエンサー)による紹介

= 市場に認められた新たなブランド

それほど企業側はSNS上のインフルエンサーの発信を含むクチコミ情報を重視している。

しかし、そのインフルエンサーの情報も信じられないと思い始めた若者たちはこのような行動をとって「反インフルエンサー」を始めたようだ。

・SNS上で検索する際に「キーワード+避坑(または踩雷)」と言う言葉をつけて検索する。避坑や踩雷は、「落とし穴を避ける」つまり、インフルエンサーに騙されることを避けると言う意味だ。

・インフルエンサーの発信を信じる前に、そのインフルエンサーに黒歴史(つまりは悪い噂)が無いかネットで調べ、信頼性を確認する。

・インフルエンサーによる投稿の内容が、「あまりに綺麗すぎないか」をチェックする。文章があまりに綺麗すぎたり、誤字脱字が全く無い場合、企業が文章を書いている可能性が高く、信頼できないということだ。

 

中国市場はものすごいスピードで変化している。テクノロジーと企業側も、そして消費者側も変化しているのだ。中国ではインフルエンサーマーケティングが最も重要、というのは、もはや過去の話になりつつあるのかもしれない。