マーケティングの神様、フィリップ・コトラーの「マーケティング5.0」を読んだのでざっくり概要と感想をまとめたい。
こちらが最近(2022年4月)に出版された日本語翻訳版。
以下は英語版の原著。ちなみにこの記事は、英語版の原著を読み書いている。
概要
「マーケティング5.0」は、ハーバード・ビジネススクールのマーケティングの神様フィリップ・コトラーによる「マーケティング3.0, 4.0」に続く待望の第3弾だ。「マーケティング3.0, 4.0」共に翻訳版があり、この「マーケティング5.0」翻訳版も2022年4月に出版された。
マーケティング1.0-4.0とは
まず、マーケティング1.0~4.0を振り返ってみたい。
マーケティング1.0 製品の販売をすることが中心。4P(Product, Price, Promotion, Place)の時代
マーケティング2.0 消費者のニーズを満足させることが中心。STP(Segment, Tageting, Positioning)の時代
マーケティング3.0 社会に貢献する価値の提供が中心であり、企業ミッションなどが重視される
マーケティング4.0 オンラインとオフラインを融合させたカスタマージャニーを描くことが求められるようになる
マーケティング3.0と4.0についてはこちらに詳しくまとめているのでご参照ください。
マーケティング5.0の定義とは
マーケティング5.0の定義は、一言で言うと以下だ。
人間を模したテクノロジーを応用し、カスタマージャーニー全体の価値を向上させること
生まれた時からインターネットに触れているZ世代(1997~2009年生)とアルファ世代(2010~2025年生)はそれ以前の世代とは異なる消費者行動や価値観を持つ。その世代に対してテクノロジーを応用した新たな価値提供をする必要があるというのがマーケティング5.0の立場だ。
マーケティング5.0の全体像
マーケティング5.0の全体像は以下のように整理できる。
応用すべきテクノロジー
AI, NLP, センサー, ロボティクス, VR, IoT
中心となる応用
予測マーケティング:過去の消費者行動のデータから、顧客がどのように行動を取るかを予測し、アプローチする
文脈マーケティング:顧客行動と、天候などの外部環境データから、最適な内容の広告を最適なタイミングで提示する
増幅マーケティング:カスタマーサポートなどにおいて、人の力をAIなどを用いて拡張させより高い価値を提供する
基礎となる組織機能
ビッグ・データマーケティング:予測、文脈マーケティングの基礎となるビッグデータの活用
アジャイルマーケティング:状況に応じてスピーディーに開発、改善を行って成長していく
感想・レビュー
個人的にはZ世代、ミレニアム世代といった世代の違いによる顧客の行動の違いについて、包括的に整理されていて面白かった。このあたりは個別で感覚的に語られることが多いが、それをマーケティングと紐づけて全体像を整理しているところに価値があると思う。一方で、今回はマーケティングというよりも、テクノロジーについて多く言及されており、一般的にすでに知られている話も多かった印象だ。とはいえ、特に大企業のマーケターにとって、テクノロジーをマーケティングに活かすことは必須の時代ではあるので、価値のある1冊だと思う。