しがないマーケターの戯言

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営業とマーケティングの壁を壊すには?|マーケティングの教科書

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DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー「マーケティングの教科書」に掲載されている論文「営業とマーケティングの壁を壊す」(著:フィリップ・コトラー、ニール・ラッカム、スジ・クリシュナスワミ)を読んで、事業会社のマーケターとして働く自分は多いに共感したし参考になったので、ご紹介したい。

マーケティングの教科書――ハーバード・ビジネス・レビュー 戦略マーケティング論文ベスト10

マーケティングの教科書――ハーバード・ビジネス・レビュー 戦略マーケティング論文ベスト10

Posted with Amakuri at 2018.11.11

  • ハーバード・ビジネス・レビュー編集部, DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー編集部
  • ダイヤモンド社

 

「マーケティング」というと、理論的で美しい戦略を立てればビジネスはうまくいくと思われがちだ。でも商売は、人が人のために行うもの。そこには人の「感情」が密に関わってくるし、時には理屈だけでは通らないことも出てくる。マーケティング部門だけでなく、各組織の「人」が一体となって顧客に価値を届ける必要があるのだ。

そんな中で、この論文では、マーケティング部門と営業部門にありがちな摩擦の分析と、それを解決するためにどのようなことが重要か、について論じられている。

マーケティング部門と営業部門の摩擦

この論文によると、マーケティング部門と営業部門の対立は、「経済的対立」「文化的対立」の2つに分けられる。経済的対立は、予算の取り合いから来る対立。それだけではなく、文化的な対立もあり、僕も個人的には後者のほうが根が深いように感じる。

 マーケターは分析を好み、プロジェクトを重視し、とにかく競争優位を築こうとする。業績を冷静に判断し、効果の乏しい施策は切り捨てる。ところが、マーケターの成果主義的な活動は現場から離れてたところで行われるため、営業部門には見えにくい。

 かたや営業担当は、既存顧客や潜在顧客と接するために多くの時間を費やす。人間関係を築く術に長け、顧客の感触を探り、好評な製品と不評な製品を判別する。とにかく行動あるのみ、断られたからといってひるむことはない。成約こそが生きがいである。これでは、マーケティング部門と営業部門のそりが合わないのも無理はない。

この文化的対立は、営業部門だけではなく、コールセンター部門(カスタマーサポート部門)とマーケティング部門、店舗事業の場合は、店舗部門とマーケティング部門との摩擦にも全くあてはまる。より顧客に近いところの部門はミクロ的にものを見るし、マーケティング部門は往々にしてマクロ的にものを見る。本来は両方とも必要であるはずだけど。

営業とマーケティングの発展4段階

営業とマーケティングの対立を乗り越え、組織として高い成果を出せるようになるには、4つの段階があるという。「独立独歩」→「役割や責任を分担する」→「連携」→「統合化」だ。特に重要な「連携」を構築するための方法として以下の4点が挙げられている。

 連携を構築するための方法

・秩序あるコミュニケーションを促す

・マーケティング部門に営業部門との橋渡し役を置く

・マーケターと営業担当を同じ場所に配置する

・営業からマーケティングへのフィードバックに注力する

各部門の連携の重要さは言うまでもない。つい、マーケターはPC上の数字だけでものごとを判断しがちだが、営業担当や顧客接点に近い部門を巻き込み、意見を取り入れるように動くことで、より精度の高いものになることも多々あるし、お互いの納得感も高くなる。

僕も実際に、広告の意見を他部門に求めて、良い結果を得られた経験がたくさんある。例え同じ結論になったとしても、双方の意見を聞いたか聞いていないかでは、施策の納得度に差が出る。その納得度は、実行段階の精度を変える。

さらに、以下が「統合」へと発展させるために効果的な方法だ。

連携関係を統合化へ発展させる上で効果的な方法

CROもしくはCOOが統括する

・マーケティングと営業の業務プロセスを明確化する

・マーケティング部門を二つに分ける

・売上目標を共有し、インセンティブ制度を一本化する

・共通の業績評価指標を設定する

マーケティング部門と、営業部門でKPIが異なるのは、大きな摩擦を招きやすくなるだろう。やはりスタッフは自身のKPIを達成するためにものごとを判断していく。それはマーケティング部門のスタッフであっても営業部門のスタッフであっても同じことだ。同じKPIや評価精度を設定することは、相互の連携を深める上で非常に重要だと思う。

また、「マーケティング部門を二つに分ける」という手法も面白かった。この二つとは、「川上(戦略)担当」と「川下(戦術)担当」だ。川下に専念する担当を作ることで、営業担当に近い業務プロセスに関わり、連携を深めるという意図だ。 

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もちろん、組織内のコンフリクトというのはネガティブな面だけではない。コンフリクトによって新たなアイデアが生まれることもある。しかし、お互いの理解が足りず起こるコンフリクトはネガティブな面が多いはずだ。マーケティング部門と営業部門が相乗効果を生めるように組織に働きかけることも、マーケターの重要な役割のひとつだろう。