この記事では、OB訪問の時間をあなたの就活にとって有意義な時間にするために「OB訪問での質問のコツ」をまとめたい。これからOB訪問を控えている方の役に立てばと思う。
こんなか方におすすめ
この記事は以下のような学生の方向けに書いている。
・OB訪問って何を質問すれば良いかよくわからない
・せっかくなのでOB訪問をできるだけ生産的な時間にしたい
・OB訪問の時に、相手の回答が抽象的で参考になりにくい
この記事の信頼性
僕は今大手事業会社で働く会社員(10年目)。個人的にキャリア支援に興味があり、OB訪問を受け、キャリアやマーケティングについて学生さんに教えるということをよくやっている。ここ最近30回以上の面談をさせていただく中で、「良い質問」と「良くない質問」がある(お互いにとって)ことを感じているので、その経験を元にまとめた。
なぜOB訪問をするのか
そもそも、なぜOB訪問というものをするのだろう。一部の大企業ではOB訪問が義務付けられていたり選考の一部だったりするが、そういったケースは除いて考えたい。
僕の考えではOB訪問は、「その企業のリアルを知り、具体的な仕事内容を知る」ということに価値がある。
せっかく人事ではなく、営業やマーケターとして働いている社会人に会えるのだ。「その会社で働くことが自分に合っていそうか、面白そうか」ということを聞く絶好の機会。今は自分の出身大学以外の社会人とつながれるサービスも多くあるので、とても恵まれた環境だと思う(自分が就活生の頃はもちろんなかったので)。
そんな貴重なOB訪問という機会を、最大限有意義なものにして、就活の役に立てられるようになれば良いな、と思いこの記事を書いている。
良くない質問
まず、できるだけ避けたほうが良いと思う質問について考えて見る。僕が「良くない」と思うのは「抽象的な質問」だ。なぜなら、抽象的な質問だと、OBからの回答も抽象的になりがちで、抽象的な回答は学生が仕事や企業を検討する上での材料になりづらいから。いくつか例を見てみたい。
御社はどんな風土ですか?
例えば企業名を主語にした以下のような質問は、抽象度が高いと思う。
「A社はどんな風土ですか」
「A社はどんな人が多いですか」
「A社で今力を入れていることはなんですか」
「A社の課題はなんですか」
特に複数の事業を持つ大手企業の場合、その事業部によって状況が大きく異なる場合が多い。なので、聞かれた社員(OB)もどう回答しようか迷うし、その回答も曖昧になってしまうことが多い。そうすると、学生自身にとっても役立つ回答が得られないことになってしまう。
このあと詳しく書いているが、上記のような質問をしたい場合は「○○さんの部署ではどうですか?」と質問を限定して具体性を上げるのが良いと思う。
1日の仕事の流れを教えてください
「1日の仕事の流れを教えてください」という質問も以外に多く、これもなかなか回答が難しい。というのも、多くの総合職系の社員は1日単位で仕事をしていないからだ。
一般的に、総合職の社員は2~3ヶ月のプロジェクト単位で仕事をしていることが多いので、計画・企画フェーズの時期と実行の時期とでは1日のスケジュールは大きく異なる。出張や会議も定期的でないことが多いのでその日によって、それによって1日のスケジュールは大きく左右される。
きっと、一般的な学生さんが経験している「働く」というシーンがアルバイトであることが、こういった質問が出る背景にあると思う。アルバイトの場合、基本は1日でも完結するような仕事が多いので、1日のスケジュールは標準化されているものだが、総合職系で働いている会社員の働き方はそうではないので、注意が必要だと思う。
もし、具体的な仕事内容を聞きたい場合は、「1つのプロジェクトはどのくらいの期間かかりますか?」などと、その人が働くサイクルを聞き、「その3ヶ月の流れはどのようなものですか?」とプロジェクト単位などで聞いてみることをおすすめしたい。
裁量はありますか?
これは人によって意見が分かれるかもしれないが、「裁量がありますか」という質問もありふれているようで、答えるのがかなり難しい。なぜかというと、学生さん本人がイメージしている「裁量」がどういうものなのかがわからないからだ。
例えば、1人の担当者が持つ企画の予算が大きいことなのか。それとも、上司からのチェックがなく、自分で判断できることが多いことなのか。そして、裁量が大きいというのは責任が重いということであり、丸投げされて教えてもらえないというケースもあるはずだが、そのあたりはどのくらい理解しているのだろうか、など。質問される側としてはいろいろな前提が頭をかけめぐって、結局回答が抽象的にならざるをえない場合が多い。可能であればそのあたりをもう少し具体的にして質問することをおすすめしたい。
良い質問
反対に僕が「良い質問」だと感じるのは、相手からわかりやすい回答を引き出せる「具体的な質問」だ。同じような質問をする場合でも、少しでも具体性を上げるニュアンスを含めるだけで、相手のOBから具体的な回答を得られ、役立つものになると思う。以下で例を挙げたい。
相手のことについて尋ねる
「○○さんはなぜその企業を選んだのですか」
「○○さんの部署では何人構成でどのようなポジションがあるのですか」
「○○さんが面接で聞かれたのはどんなことでしたか」
「○○さんは他にどのような企業を検討していましたか」
など、相手のケースに限定して尋ねると、相手は自分の経験をダイレクトに答えることができるので、わかりやすく明確な回答を得られる。
シーンを限定する
「今までで一番思い入れのある仕事について教えてください」
「今までで一番した大きなミスはなんですか」
「新入社員の頃に苦労したことはどんなことですか」
のように、相手の話かつシーンを限定した質問をすると、相手も具体的なエピソードを話してくれるはず。抽象的な精神論を語られるよりも、具体的な仕事のエピソードを聞いたほうが、きっと自分が就く仕事のイメージも描けるのではないだろうか。
自分の意見を混ぜる
「〇〇だと思うのですが違いますか?」
「〇〇の仕事は~なところが大変だと思うのですが、どうでしょうか?」
「御社の新しい商品Aは○○な顧客に人気が出そうだと感じたのですが、どうでしょうか?」
このように、ただ漠然と「どうですか?」と聞くのではなく、自分の意見をはさむと相手も「Yes/No」を回答しやすく、その理由を教えてくれるはずなので、具体的な仕事内容やその企業の事業について理解が深まるはずだ。
ちなみに、その時の自分の意見が正しいかどうかは全く重要ではないので、自身がなくても大丈夫。きっと相手も丁寧に背景や理由を説明してくれる(はずだ)。
OB訪問前の準備
最後に、上記のように「良い質問」をしてOB訪問の時間の生産性を高めるために、おすすめの事前準備を紹介しておきたい。残念ながら、OB訪問を受ける側としては、相手の学生が少しでも準備をしているのか否かというのがはっきりわかる。準備を全くしていないと、OB側も相手(学生)が何を知りたいのかがよくわからないので、お互いにとって時間が無駄になってしまう。だからこそ、それほど時間はかけなくて良いので、事前にある程度準備をしておくことをおすすめしたいのだ。
企業の事業内容やサービスを調べる
まず、そのOBが勤めている会社の事業内容や、商品やサービスについてざっと調べて書き出してみよう。企業のWebサイトを10分も見ればだいたいわかるはず。時間があれば競合となる企業のWebサイトも見て、その企業の商品・サービスと何が違うのかをなんとなく想像してみるとより理解が深まると思う。
決算報告会発表資料に目を通す
一部上場している企業の場合は、Webサイトの「IR情報」というページに「決算報告会資料」というPDFのスライドがアップされていることが多い。最新のものだけで構わないので、これを一読してみよう。
この「決算報告会資料」というのは、企業が株主(資金を出してくれている人)向けに、現在の事業の状況や、どのようなことに力を入れているのかを説明するために作られている。隅々まで理解したり数字(売り上げや利益)を覚えたりする必要はないので、この企業が向かっている方向がどういう方向なのかをチェックしてみよう。
質問をいくつか考えておく
事業や商品・サービスの内容を押さえ、決算報告発表資料で、その企業が向かっている方向がつかめたら、いくつか質問を事前に考えてみよう。もちろん、それをすべて聴く必要はないが、手元にメモとしておいておけば面談中の時間を無駄にすることなく、有意義な時間を過ごせるはずだ。
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以上、OB訪問を有意義な時間にするための質問と準備のコツをまとめてみた。参考にしてみてほしい。