高校時代の野球部の同級生から、Yahoo!ニュースの記事のリンクとともにLINEが来た。
「お前MBA卒業したら歌手目指したら」
笑いそうになったが彼はわりと真剣だった。(僕は現在、会社員でマーケティング担当として働きながら大学院に通っている)
マーケティングとしての作詞作曲
その記事によると、ポルカドットスティングレイという人気バンドのボーカルの雫さんは、メジャーデビュー前に2年間、ゲームクリエイターとして活躍する会社員だったらしい。彼女は会社員時代、エンターテイメントとマーケティングを学んだそうだ。
面白いのは、彼女はクリエイターとマーケティングの仕事から、「人のニーズに応えること」を学び、それをそのまま作詞作曲に役立てていることだ。「お客さんが求めるもの」を作っている。
僕は社会人になってこのかた、ずっとマーケティング担当として働いている。そして、確かに中学生の頃からギターと歌が好きで、会社の同僚と趣味バンドを組んでいたこともある。それを思い出して、冒頭のLINEを彼はくれたようだった。
器用貧乏が活きる時代
ちょうど同じタイミングで、筑波大学の落合陽一さんの記事を読んだ。彼によると、AI時代に様々な仕事が自動化されていく中で、「職業、スキルが1つだけなのは危険」だという。
私自身を振り返っても、職業的スキルは多岐に渡っている。本業である大学の先生、メディアアーティスト以外に、作家、ジャーナリスト、バラエティ番組出演者、写真家、CADオペレーター、ハンダ付け作業士など。数えたところ、文字通り100個ぐらいの仕事をひとりで行っている。
ところで、才能の多彩さといえば俳優の星野源さんが思い浮かぶ。著書「そして生活はつづく」の中で、部屋探しをしている時に、不動産屋さんに職業を聞かれて答え方に困ったというエピソードは面白かった。
どうしよう。なんて言ったらいいかわからず焦った。
私には、職業がいくつかある。
役者業。音楽業。文筆業。映像制作業。
どれも収入が不安定そうな職業ばかりだ。
スキルの掛け合わせで活きる力に
ポルカドットスティングレイの雫さんは、作詞作曲とマーケティングスキルを掛け合わせて成功している。落合陽一さんは、研究者として、そしてそれを世の中に発信するスキルを作家やジャーナリストとして発揮。星野源さんは、自身で手がけた音楽をドラマの主題歌にし、役者として活躍している。
こう考えると、スキルを複数をもつことはリスクヘッジという観点だけではなく、相乗効果を生み出すことでその人の価値を高めるのだと思う。
誰もが仕事に直結しなくても好きなことや得意なことがいくつかあるだろう。僕は歌もギターも好きだし、イラストを描いたり文章を書いたりすることも大好きだ。そして勉強も好きだ。どんな仕事も人並みにはできる。でも、どれも決してずば抜けているわけではない。まさに「器用貧乏」の自覚がある。
歌手という世界はぶっ飛びすぎだとしても、冒頭で紹介した友人の言葉は、これから自分のキャリアを考える上で、真剣に向き合う必要があるのかもしれない。