この記事では、世界でもメジャーな宗教であるキリスト教・イスラム教・ユダヤ教の違いと特徴を、箇条書きで完結にまとめている。
この記事は、茂木誠「ニュースの"なぜ?"は世界史に学べ」を元にまとめてある。著者は駿台予備校の有名講師ということで、本書は非常にわかりやすい。キリスト教、イスラム教、ユダヤ教といった宗教の歴史を横並びで見ると、世界経済の根本的な背景が理解できるのでおすすめの1冊だ。
また、仏教・神道・儒教については以下の記事にまとめてあるのでこちらもご参考。
同じ起源を持つ宗教
歴史に疎い人から見ると意外かもしれないが、キリスト教とイスラム教は、どちらもユダヤ教から別かれた宗教だ。唯一創造神ヤハウェ(アッラー)を起源とし、何を信じて何を信じないか、というスタンスの違いで大きく3つの宗教に分かれていった。
ユダヤ教
・モーセが語った神の言葉『旧約聖書』を経典とする
・親子の縁より神様への忠誠心が大事
・安息日の規定。土曜日は一切労働をせずに神に祈る必要
・豚肉は食べてはいけない
・厳格な律法のため、異民族に広がりにくい
・ユダヤ人は神に選ばれた民
・律法を守った者は天国に導かれ、異教徒は地獄に落とされる
イスラム教
・最後の預言者ムハンマドが伝えた『コーラン』を経典とする
・神の言葉を預かる預言者は何人も存在したというスタンス
・モーセ、イエスも預言者の一人であると認める
・イスラム教とは『旧約聖書』も『新約聖書』も重んじる
・ヤハウェ(アッラー)が唯一絶対の神 →イエスは神ではない
・アッラーの前では平等が第一で、格差を否定
・平等・分配の徹底 →富の不均衡に対する反発
・偶像崇拝の禁止
キリスト教
・イエスが語った神の言葉『新約聖書』を経典とする
・厳しい律法には意味がないというスタンス
・心のそこから神を信じれば救われる
・異民族でも信仰すれば神に救われる→世界的に広がる
・ユダヤ人のイエスが主張 →処刑されるが復活して神に
・イエスを神と認めるか否かがユダヤ教の根本的な違い
キリスト教の宗派
さらに、キリスト教の中でもいくつかの宗派に分かれていく。代表的なものがカトリック、プロテスタント、正教会、とされる。ここで面白いのは、プロテスタントのスタンス「一生懸命働くことが神の御意志にかなうことである」が、資本主義の発展に寄与しているという著者の考察である。現に、プロテスタント信仰者の多いアメリカ、イギリス、ドイツ、イタリアは急速に経済発展を果たした。
カトリック
・サン・ピエトロ大聖堂(ローマ・カトリック教会の総本山)
・ローマ教皇 →キリスト教の最高指導者
・寄付金集めに熱心な教会
・「勤労と蓄財は罪」→民衆に力を持たせないため
プロテスタント
・ドイツのルターとスイスのカルヴァンが主張
・「勤労と蓄財は罪」を否定
・一生懸命働くことが神の御意志にかなうことである
・この思想が現代の資本主義のバックグラウンドである
・ドイツ、イギリス、イタリアが経済的に発展したのはこのプロテスタントの普及が背景にある
・反対に、スペイン、ポルトガル、中南米はカトリックが普及 →大きく経済発展せず
正教会(東方教会)
・ロシアやギリシャに広がるキリスト教
・カトリックにもプロテスタントにもある「原罪」の意識が希薄
・原罪:人間は生まれながらにして罪を負っている。だから、その罪を清めないと神に救ってもらえない
・原罪を清める方法:カトリック→教会に一生懸命寄付すること。プロテスタント→勤勉に働くこと
・正教会には、原罪の意識が希薄なので、「何かを一生懸命やらなければ、という切迫感が乏しい
・その結果、勤労意欲も希薄に
イスラム教の宗派
イスラム教も大きくスンナ派とシーア派に宗派が分かれる。この信仰思想の違いが、イスラム世界の対立を生み出している。
シーア派
・マイノリティ。イスラム教徒の10%ほど
・ムハンマドの血統を重視する
・ムハンマドの後継者アリーと、直系子孫12代をイマーム(指導者)と呼ぶ
・12代イマームは「隠れている」という神話
・イランはシーア派の大国
・イランの最高指導者ホメイニ(1979年のイラン革命を指導)
・ホメイニは12代イマームの代理人として国を治めるという名目
・偶像崇拝にはゆるい
スンナ派(スンニ派)
・マジョリティ。イスラム教徒の90%を占める
・経典『コーラン』を重視する
・コーランとスンナ(しきたり)に従うイスラム教徒であれば、ムハンマドの子孫でなくても指導者になれる
・ムハンマドは最後の予言者であり『コーラン』がすべて
・隠れイマームは存在しない
イスラム原理主義
・イスラム原理主義者ISはスンナ派
・コーランに書かれていないことは絶対にゆるされない
・時代に合わせてコーランの解釈を変えていく世俗主義を否定
・偶像崇拝にゆるいシーア派は許し難い存在
以上、宗教の歴史と特長をまとめてみた。これからはこの知識を元に、世界情勢を見ていきたい。