東京大学・中原淳先生の書籍『働く大人のための「学び」の教科書』を読んだ。
コンフォートゾーンからの脱出
仕事における人の心理状態は3つに分類できるらしい。
背伸びをしようとする大人の心理状態
①コンフォートゾーン
・いつもの仕事をこなしている
・まったり、ほんわかゾーン
②ストレッチゾーン
・適度な背伸びの仕事を任されている
・能力が伸びている
③パニックゾーン
・無茶ぶりの仕事を任されている
・パニック、恐怖と不安で能力どころではない
僕は新卒で入った会社で7年で4つの部署を経験し、今は別のグループ会社で働いている。同じ会社の中でもわりとコンフォートゾーンから出る経験をしていると思う。今まで一緒に仕事をしたことのないタイプの人たち、また外国人ともコミュニケーションをとりながら働いているし、今は大学院(Bond-BBT経営大学院)でも異業種の人たちと一緒に学んでいる。
コンフォートゾーンで働くことはとても楽だ。すでにある知識やスキルで対応できることが多いし、長く働いている社内には知人も多く、最初から双方の信頼もあるので仕事を進める上で話が早い。一方長く勤めた組織を離れると、新しい業務知識、スキルの習得が必要で、会社内の人からも「お前誰やねん」状態から仕事をすることになるので、コミュニケーションに気を使うし難しい。ストレスもかかる。ただし、僕は今のほうが成長実感を感じられる。新しい環境に飛び込めば飛び込むほど、「自分はどこでもやっていける」という自信につながる。
「同じ場所で働くのは楽なんだけどなんだかな~」という気持ちがあったが、本書は上手く言語化していただいていると思う。
インプットから、スループット&アウトプットへ
大人の学びの手法として以下が指摘されていた。
大人の学びは、
聞く(インプット)
聞く(インプット)
聞く(インプット)
帰る
であってはなりません。
聞くことの重要性は認識しつつも、大人の学びは、
聞く(インプット)
考える(スループット)
対話する(アウトプット)
気づく・変わる
でなくてはならないのです。
自分が学んだ大学院(Bond-BBT経営大学院)でのオンライン授業でも、このやり方がまさに実践されていると感じる。巷に溢れかえる4P, 3C, SWOTなどのビジネスフレームワークは、その存在を覚えるだけでは何の意味もない。オンライン大学院のディスカッションでは、講義で扱ったフレームワークや思考法を使って自分で企業を分析したり(スループット)、クラスメイトの投稿に対して意見や質問を投げかけディスカッションを行う(アウトプット)。これが個人的にはかなりよかった。本を流し読みしただけでは身につかない、使える知識になっている実感がある。仕事でも、未知な領域に対してリサーチして考えをまとめるという作業が苦ではなくなった。
この「聞く(インプット)、考える(スループット)、対話する(アウトプット)、気づく・変わる」というサイクルだが、必ずしもビジネススクールに通わなくてもできるものだとも思う。誰かから一方的に正解を教えてもらう類の話ではないからだ。複数人で集まって、なんらかの課題を設定して各人で考えて、発表して、それに対して感想や意見、質問を言い合うだけでもかなりの学びになると思った。
学びの先にあるものは
この本の終盤に、ある大手食品商社出身の方の「学びの履歴書」がケースとして取り上げられていた。その中で紹介されていた言葉に強い共感を覚えた。
70歳を過ぎても働ける人間になりたい。年齢で自分の人生が決まるのはごめんだ。誰かと比較して自分の力を確認するのではなく、『〇〇会社のM』ではなく、『Mがたまたま〇〇会社にいる』という自分でいたい。
自分の人生を会社という狭い社会の中で完結させるのではなく、コンフォートゾーンから飛び出し、学び、成長し、自分の人生の主人公は自分でいたい。なんてことを思った。