2019年3月21日、イチロー選手が引退した。
めちゃくちゃに多くの人が驚きや切なさ、感謝を感じていると思うが、僕を含む多くの野球経験者、特にアラサー世代にとっては、とてつもなく感慨深い出来事だと思う。
なぜなら、イチロー選手の全盛期(日本でのオリックス時代から、大リーグへの移籍と大活躍)がちょうど部活動で野球に熱中している小中高校生時代にかぶっているからだ。
僕自身も、小学生の頃に野球をはじめ、なんだかんだ大学生まで13年間続け、その中でイチロー選手の存在には多大な影響を受けたと思う。
小学生の頃に出会った1冊の本
今は絶版になっているようだが、僕は小学校の図書室で「イチローのすべて」というイチロー選手の伝記のようなエッセーを読んだ。当時の僕は読書好きでもなかったので、初めてちゃんと読んだ本がイチロー選手の本だったと思う。
・小学生の頃から毎日のように父親とバッティンクセンターに通いつめていたこと
・高校時代にはチームの練習が終わった後もひたすらに自主練をしていたこと
・プロ野球選手になってからも、指導者との葛藤もありつつ、独自のバッティング理論を貫く努力をしていたこと
そこには、こんなことが書かれていたと今も記憶している。小学生の僕は、「天才」と呼ばれるイチロー選手でもこんなに努力を積み重ねていることに驚いた。それを通して、自分も努力を積み重ねれば、イチロー選手に近づけるかもしれない、さらに、成功するには圧倒的な努力が必要だということを学んだ。
引退記者会見で「実力以上の評価を受けることは苦しかった」という言葉は、あの天才イチロー選手の隠れた苦悩が滲み出る非常に印象的な言葉だった。
右投げ左打ちのクールさ
もう一つ、テクニカルな話になるが、イチロー選手の活躍が野球というスポーツに与えた大きな影響として、「右投げ左打ちのクールさの確立」というものがあると思っている。
それまでのスター選手は、どちらかというと大きなホームランを放つスラッガーが中心だった。でもイチロー選手の魅力は、大きなホームランを放つことではない。
・左打席からの超絶美しい流し打ち
・ボテボテの内野ゴロをヒットにする俊足
・惚れ惚れする守備範囲と強肩
イチロー選手は、そんな器用で機動力を強みにする右投げ左打ちのクールさを作った人だと思う。イチロー選手の登場から、左バッターに転向する野球少年がかなり増えたはずだし、僕も大学時代に左バッターに転向した経験がある。これはもちろん、イチロー選手への憧れだけが理由ではないが、その影響力は絶対にある。
グローバル人材としてのイチロー選手
引退会見で印象的だった「海外に来て、自分が外国人になって、人の心を慮ったり、人の痛みを想像したり、今までなかった自分が現れた。このことは、本を読んだだけでは自分の中からは現れない。この孤独と戦った体験は、未来の自分にとって大きな支えになると思う」という言葉。
これは、異文化の中で成果を出すために戦った、まさにグローバル人材としての言葉だと思う。自分が海外で働きたいと思う気持ちがさらに強まった。
そしてさらに、「できると思うからやってみるのではなく、やりたいからやってみる。やりたいと思ったことに向かっていきたい」という言葉は、これから何かに挑戦したいと思う人を強く後押しすると思う。
数々の伝説を残し、野球を変えたイチロー選手には多くのファンと同じように敬意と感謝を示したい。