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ブルーオーシャン戦略の原文も読める|ハーバードビジネスレビューBEST10論文

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「ハーバードビジネスレビューBEST論文10」は、マーケティングやマネジメントに関わるどんな人にもおすすめできる1冊だった。

ハーバード・ビジネス・レビューBEST10論文―世界の経営者が愛読する

ハーバード・ビジネス・レビューBEST10論文―世界の経営者が愛読する

Posted with Amakuri at 2018.11.26

  • ハーバード・ビジネス・レビュー編集部, DIAMONDハーバード・ビジネス・レビ
  • ダイヤモンド社

 

ざっくり内容

本書には、ハーバード・ビジネス・レビューにかつて掲載された「名作」と呼ばれる論文が10本収録されている。分野は、競争戦略、マネジメント、マーケティング、自己成長など様々だ。

この本で学べるのは最新のマーケティング理論ではない。本書が出版されたのは2014年だが、収録されている論文は、古いものだと1960年のものまである。

でも、長く、世界中で愛読されている論文に厳選されているだけあって、いつの時代も変わらないビジネスにおける深い思考が学べると思う。

個人的には、クレイトン・M・クリステンセン「イノベーションのジレンマへの挑戦」や、W・チャン・キム「ブルーオーシャン戦略」、そしてヘンリー・ミンツバーグ「マネージャーの仕事」あたりは、経営学におけるバイブルとして特に読む価値があるものだと思う。

必読論文

中でも読めてよかったのはW・チャン・キム「ブルーオーシャン戦略」の原文だ。もちろん、ブルーオーシャン戦略の概念自体は知っていたが、恥ずかしながら、肝心の元々の論文を読んだことがなかった。

ブルーオーシャン戦略とは

一方、ブルーオーシャン戦略とは、まだ存在しない市場を象徴している。知られざるマーケット・スペースであり、手垢のついていない市場である。このブルー・オーシャンでは、需要は勝ち取るものでなく、みずから作り出さなければならない。

つまり、ブルーオーシャン戦略とは、「競争して勝つ」ことではなく、「競争を避ける」戦略と言い換えられる。(競争が激しい市場を「レッドオーシャン」と呼ぶ)

ブルーオーシャン戦略の事例

この論文で取り上げられていた事例で面白かったのは、サーカスで有名な「シルク・ドゥ・ソレイユ」である。シルク・ドゥ・ソレイユは、1984年に結成されて以来、他の世界的トップ・サーカス団が1世紀以上かけてたどりついた売上に、20年であっさりと追いついた。シルク・ドゥ・ソレイユが行ったブルーオーシャン戦略は以下。

シルク・ドゥ・ソレイユのとった戦略例

・サーカスならではのスリルと楽しさに加えて、知的な奥行きと演劇の芸術性を提供

・たいていのサーカスで使う動物を使うことをやめた(それにより、訓練、飼育、医療等の様々なコストをカット)

・芸人をスター扱いすることをやめた(人件費のカット)

・「テント」にこそほかの何にも勝るサーカスの魅力を象徴するものだと見抜き、デザインに凝った(他のサーカス団はレンタルで安価テントを利用)

つまり、シルクは、サーカス業界という一見既存の市場の中で、ことごとく競争を避けて新しいスタイルを貫いたということだ。

言い換えると、「逆張り」の発想。他社と直接的に競争するのではなく、一見常識から外れている「逆張り」を行い、それが大きな顧客価値となることで、莫大な利益を上げられるということだろう。

差別化戦略との違いは?

この論文を読んで、僕はつまるところマイケル・ポーターが言う「差別化戦略」とどうちがうのかが明確に説明できない。

ポーターは、企業が成功するための競争戦略には3つしかないと言い、それは「コストリーダーシップ戦略」「差別化戦略」そして「集中戦略」だ。

現段階の理解では、「差別化戦略」よりも、「ブルーオーシャン戦略」のほうが、ドラスティックな差別化を指すのだと思う。

例えば、Appleがデザインにこだわり抜いたMac PCをリリースしたことは差別化戦略かもしれないが、それまでなかったiPad(タブレット)をリリースしたことはブルーオーシャン戦略だということだ。

 

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以上、少しでもマーケティングやマネジメントをかじったことのある方、もしくはより知識を身につけたい方にとって、一度は読むべき論文集だと思う。