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「ポーターの競争戦略」の意味を中学生でもわかるように解説

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この記事は、「競争戦略?何それ食えんの?」という人のために「ポーターの競争戦略」を中学生でもわかるように解説した記事だ。

 

マイケル・ポーター氏は、世界で最も有名な経営学者の1人で、ハーバード・ビジネススクールの教授だ。そのポーター氏が専門としているのが「競争戦略」である。

 

競争戦略は簡単にいうと、企業同士がライバルとなる企業との競争にどのように打ち勝つのか、という理論のことだ。

 

3つの基本戦略

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ポータは著書の中で、企業が生き残るための競争戦略は3つしかないと言っている。その3つが以下だ。

 

●コスト・リーダーシップ戦略

 良いものをライバルよりも安く提供する方法

 

●製品差別化戦略

 ライバル企業と違う特徴をもつ商品を提供する方法

 

●集中戦略(ニッチ戦略)

 小さな分野に絞って、儲けを得て小さく生きる方法

 

この3つの基本戦略を例を見ながら1つずつ見ていこう。

 

コスト・リーダーシップ戦略

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例えば、あなたのクラスでは文化祭で「焼きそば屋さん」を出店することになった。でも隣のクラスも焼きそば屋さんを出店するらしい。これはどちらがたくさんお客さんを集められるか、かなりの競争になりそうだ。

 

もし、隣のクラスが1皿500円で焼きそばを売るのであれば、あなたのクラスは1皿400円で焼きそばを売る。これが「コスト・リーダーシップ戦略」だ。

 

では、どうすれば隣のクラスより安く焼きそばを提供できるだろうか。1つの方法としては、「材料を一気にたくさん買う」と、1皿あたりにかかる費用は低く抑えられる。例えば、小分けのポテトチップスよりも、1袋が大きいサイズのポテトチップスのほうが、量の割にはお得な値段になっていることを思い出して欲しい。「一気にたくさん買うと安くなる」は、商売の基本だ。これを「規模の経済」と言ったりする。

 

別の方法として、「めちゃくちゃ焼きそば作りを練習する」という方法。もし、あなたが焼きそば作りを猛練習すれば、もしかしたら、材料を無駄にしない上手い作り方がわかるかもしれないし、手間をかけずに早く作る方法がわかるかもしれない。そうすれば、手間が減るわけなので、1皿あたりの値段を安くできる。これを「学習による経済性」と言ったりする。

 

製品差別化戦略

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もし、あなたの焼きそば屋さんが、値段は同じだとしても隣のクラスとは一味違う焼きそばを提供できるなら、それは「製品差別化戦略」だと言える。

 

なぜ違いが必要か、というと、人は物を買う時に「どっちが安いかな?」「どっちが自分の好みに合っているかな?」という「違い」を比べて決めるから。

 

例えば、「シーフード焼きそば」という海鮮具材をたくさん使った焼きそばを提供することで、隣のクラスとの違いを出せる。そうすれば、エビやイカが好きな人は、あなたの焼きそば屋さんを選んでくれる可能性が高まるだろう。

 

製品差別化の手段となるものは、焼きそばの「内容」だけではない。

 

例えば、「品揃え」。シーフード焼きそばに加え、「醤油焼きそば」「ビーフ焼きそば」「大盛り焼きそば」などたくさんの種類を提供できれば、それはいろいろな種類の焼きそばを楽しみたい人にとっては魅力になる。

 

その他の差別化の手段

●ロケーション

場所も差別化の手段となることがある。他の焼きそば屋さんより、目立つところ、行きやすい場所に出店する。例えば、文化祭会場の入り口付近にお店を出店できれば、それは大きな差別化になる。

●付加サービス

本来の商品に付属したサービスを提供すること。例えば、行列ができた時に待ち時間に温かいドリンクを提供してもてなす。または、店員を全員ハンサムな男子大学生で揃える(女性客に人気になるかもしれない)、などなど。

●歴史や評判

時には、その商品の提供者が持つ「歴史」や「評判」も差別化要因になる。例えば、「初めて焼きそばを作ることになった素人」のお店よりも、「バイト先で数年間、1万食以上の焼きそばを作ってきたプロ」の焼きそばのほうが人気が出るかもしれない。

また、「食べログ」や「ぐるなび」などの飲食店ポータルサービスで、ユーザーの評価が重要であることを考えると、人が商品を選ぶことにおいて、「評判」がとても重要だということは一目瞭然だ。

 

集中戦略(ニッチ戦略)

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最後に、一定の小さな(ニッチな)分野に集中することで、利益を確保して生き残る方法が、「集中戦略(ニッチ戦略)」だ。

 

例えば、焼きそば屋さんの商品を、「大盛り豚肉焼きそば」だけに絞ったらどうだろう?安くたくさん食べれるので、ラグビー部や野球部などの運動部男子から大人気になるかもしれない。

 

その代わり、健康や美容を気にしている女性のお客はあまり来ない可能性が高い。

 

ここで重要なのは、分野を小さく絞ることで、メリットがあるかどうかだ。「大盛り豚肉焼きそば」だけに絞ると、野菜を始めとした他の材料を買う必要がなくなる。そうすると、費用や手間を大きく削減できるので、利益が出やすくなる。

 

また、「大盛り豚肉焼きそば」という商品に絞ることで、お客さんにもその魅力や他のお店との違いが伝わりやすくなる。安くたくさん食べたい男子学生にとって、「おいしい焼きそば屋さん」という看板よりも「大盛り豚肉焼きそば屋さん」という看板のほうが圧倒的に惹かれるはずだ。「人は、具体的に言われるほうが理解しやすい」ものなのだ。

 

その「違い」はちゃんとお客さんに伝わるか

さて、ここまで「コストリーダーシップ戦略」「製品差別化戦略」「集中戦略」について見てきた。どの戦略でも、まずはライバルと「違い」を作ることが重要だということだ。その「違い」が、値段なのか、他の特徴なのか、というだけなのだ。

 

ただ、一つ注意しなくてはならないのが、その「違い」はちゃんとお客さんに伝わるものか、ということだ。

 

例えば、「安い焼きそばを作る!」と言って、隣のお店が1皿520円で提供しているところを、510円で提供したとしても、お客さんは大して違いを感じられないかもしれない。

 

「この焼きそばは高級なソースを使用しています」と言っても、お客さんに「普通のソースとの違いがわからないな…」と思われてしまっては意味がないのだ。

 

これは、実際のビジネスでもよく起こる。例えば、スマートフォンを選ぶ時、よく「●万画素の綺麗な写真が撮れます」のようなことが紹介されるが、写真に詳しくない人からすると、それほど高画質な写真が撮れることがどんなメリットになるかわからないし、他のスマホとどれほど良いのかもピンとこない。

 

その「違い」はちゃんとお客さんに伝わるものか、ということは、意外と重要なのだ。

 

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今回は、ポーターの競争戦略をご紹介した。もっと詳しく知りたくなった方はぜひ以下の書籍を(初めて勉強する方は、以下のエッセンシャル版がおすすめです)。

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