この記事は、「ブルーオーシャン?何それ食えんの?」という人のために「ブルーオーシャン戦略」を中学生でもわかるように解説した記事だ。
「ブルーオーシャン戦略」は、W・チャン・キム とレネ・モボルニュという有名な教授が提唱した経営学の理論であり、「ライバルと競争するのではなく、ライバルがいない市場(場所・分野)を作ってビジネスする、という戦略」のことだ。
*「経営学」とは、会社を運営していくための知識や心構えを学ぶための学問。例えば、どうやって商品を作って、どうやって売れば良いのか。社員をどうやって集めて、どんな組織を作れば良いのか。お金はどうやって使えば良いのか、など。
レッドオーシャンとブルーオーシャン
まず、ブルーオーシャン戦略を理解するためには、「レッドオーシャン」と「ブルーオーシャン」という言葉の意味を知る必要がある。
レッドオーシャンとは、ライバルとなる企業(競合企業)がたくさんいる市場のこと。簡単な例を見てみよう。
ラーメン屋とカフェの話
ある街は、ラーメン屋がたくさんあることで知られている。この街には学生が多く、安くたらふく食べられるラーメンが人気なのだ。
少し歩くと札幌ラーメン屋、横浜ラーメン屋、博多ラーメン屋、つけ麺屋など、いろいろな種類のラーメン屋が並んでいる。ラーメン好きにはたまらない街だ。ただ一方で、当のラーメン屋さんたちは、他のお店よりもお客を集めるために激しい競争をしている。
あるラーメン屋は、安さをアピールし、どんどん価格を下げる。あるラーメン屋は他の店より種類が多いことをアピールしている。他のお店より多くのお客さんを呼び込むためだ。
このように、一つの市場(場所や、業界や、商品カテゴリー)にたくさんの種類があって、お客を奪い合っている状態がレッドオーシャンである。
一方で、ブルーオーシャンはその逆。ライバルとなる企業がいない(もしくは少ない)市場のことだ。
ラーメン屋にとってのレッドオーシャンであるこの街には、実はゆっくりくつろげるカフェがなかった。しかし、ある時、安くて美味しいコーヒーが飲め、学生が勉強するのにうってつけのカフェができた。すると、たちまちそのカフェは大人気になった。
このカフェは、特別に素晴らしいコーヒーがあったわけではない。単純に、競合となるカフェがない場所だったので人気が出たのだ。このように、「競争がない」状態のことを、ブルーオーシャンと呼ぶ。
ブルーオーシャン戦略とは
さて、本題の「ブルーオーシャン戦略」とは、レッドオーシャンを避け、競合がいない(とても少ない)市場でビジネスをすることを指す。これを理解するために、もう一つ簡単な例を見てみよう。
学芸会の桃太郎
小学5年生のサトシのクラスでは、次の学芸会で桃太郎の演劇をすることになった。そのために、いろいろな役割が割り振られることになった。台本を考える人、小道具を作る人、衣装を用意する人など、たくさんの役割がある。
しかし、やはり大人気なのは桃太郎や鬼の役として劇に出る役割だ。特に、桃太郎とその仲間(猿、犬、キジ)の役にはたくさんのクラスメイトが立候補した。サトシももちろん劇に出たい。できることなら桃太郎の役でもやりたいくらいだが、せめて桃太郎の仲間役に食い込みたい!
そこで、サトシはどのような作戦をとるべきだろうか?自分の桃太郎の熱意を語る?自分が猿に似ているとアピールする?
実際にサトシがとった作戦は「台本を考える人」に立候補することだった。そして台本を一生懸命考えながら、サトシは学芸会の桃太郎にオリジナリティを出すため、桃太郎の仲間(猿、犬、キジ)に、さらに「ネズミ」を加えた(サトシはハムスターを飼っていてネズミが好きだった)。その役はあまり人気がなかったため、あっさりとサトシの役割になった。
ネズミはすばしっこく鬼の髪の毛の中や服の中に侵入して噛み付くことで活躍する役だった。他の役より人気がないネズミの役にはサトシがつくことになり、学芸会で見事、桃太郎の仲間の一人(一匹?)として活躍できたのだ。
ブルーオーシャン戦略のポイント
さて、この学芸会の桃太郎の例を見ながら、ブルーオーシャン戦略のポイントをいくつか見てみよう。
「競争をしない」ことがブルーオーシャン戦略
まず、ブルーオーシャン戦略の根本的な考え方は「競争をしないこと」である。相手を打ち負かすのではなく、新たな市場を創り出すのだ。桃太郎の例で、サトシは、他のクラスメイトと競争するのではなく、自分で新しく、全く違う役を生み出してしまった。競争を生まない状況を自分で創りだしたのだ。
「差別化」とは似て非なるもの
よくビジネスの世界では「差別化」という言葉が使われる。他の企業と違いを作り出すことによって、競争で勝とうとすることだ。この「差別化」と「ブルーオーシャン戦略」は、他の企業と「違いを作り出す」という点では非常に似ているが、正確には異なるものだ。
桃太郎の例で、もしサトシが猿の役をゲットするために「自分が他のクラスメイトに比べていかに猿の真似が得意か」をアピールする戦略をとっていたら、それは一つの「差別化戦略」になり得る。
しかし、ブルーオーシャン戦略は、競争するのではなく新しいポジションを作ることだ。だから、ネズミの役を作るというサトシの戦略は、差別化ではなくブルーオーシャン戦略に近いと言える。
「逆張りの発想」がキモ
もう一つ、ブルーオーシャン戦略で重要なのは、「逆張りの発想」だ。「競争相手のいない市場を作る」と言っても、すぐに競争相手が乱入してくるかもしれない。ブルーオーシャン戦略とは、一度作れば永遠というものではないのだ。
そこで重要なのは、他に「真似されにくい」「真似しようと思わない」市場にすることなのだ。もし、サトシが新しく作った役が「かっこいいライオン」だったらどうだろう。きっと立候補が続出していたに違いない。ネズミという微妙なところ(だけどサトシはネズミが好き)であることが絶妙だったのだ。
アップルコンピューターの例
最後に、実際のビジネスの事例でも確認しておきたい(一応、ビジネスの話なので)。
今でこそ多くの家庭でパソコンが使われているが、元々、コンピューターといえば大企業が複雑なシステムを構築するためのものだった。
そこに、1978年アップルが一般の人でも使いやすく機能を一体化した「アップルⅡ」と呼ばれるパーソナル・コンピューターを発売した。(正確には、これより前にパソコンは存在したが、一般の個人に受け入れられるものとしてはアップルが最初)これにより、「家庭でコンピューターを使う」ということが普及したのだ。
アップルは、コンピューターは企業が使うもの、という常識を壊し(逆張り)、「パーソナル・コンピューター」という新しい市場を創造したのだ。
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以上、できるだけ簡単な例を用いながらブルーオーシャン戦略をご紹介した。もっと詳しく知りたくなった方はぜひ以下の書籍を。
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