経営学の権威の1人であるマイケル・ポーター氏は、著書『競争の戦略』の中で、企業が生き残るための競争戦略には以下の3つしかないと主張している。
✔︎ コスト・リーダーシップ戦略
✔︎ 製品差別化戦略
✔︎ 集中戦略(ニッチ戦略)
つまり、良いものを安く提供できるか、それとも他にはない独自のものを提供できるか、もしくは、狭い分野に絞ってそこで小さく一定の利益を上げるか、の3つであるということだ。この記事では、その3つの戦略について簡単な事例をあげながらまとめたい。
本家はかなり分厚い専門書なので、一般のビジネスマンが読むにはエッセンシャル版で十分だと思う。
コスト・リーダーシップ戦略
例えばあなたがTシャツ屋さんの経営をしているとして、隣のTシャツ屋さんと同じ(もしくはそれ以上)クオリティで安いものを提供できるか、ということ。
それを実現するために必要なことは、例えば、「規模の経済」。たくさんTシャツを作るとその分、固定費の割合が下がって安く作ることができる。
もしくは「学習による経済性」。Tシャツを長年作っていると、効率的な生産方法がわかってくる。一気に裁断する効率的な方法がわかるかもしれないし、デザインノウハウがたまってくると、人気のデザインをスピーディーに作れるようになるかもしれない。そうすると、短い時間・低コストでたくさんのTシャツを作れるようになるのだ。
製品差別化戦略
Tシャツ屋さんの例で言うと、隣のTシャツ屋さんにはない独自のデザインや、サイズ、形状のものを提供できるか、ということだ。あなたのお店でしか買えないTシャツがあることは、顧客があなたのお店でTシャツを買う明確な理由になる。
製品差別化の源泉となる要素は、何もデザインや形状という「製品の特徴」だけではない。
例えば、「品揃え」。隣のTシャツ屋さんには10種類のTシャツが並んでいるが、あなたのTシャツ屋さんには100種類ある。これはお客さんがあなたのお店に行って買う動機付けになるだろう。
他にも、行くのに便利な場所にある「地理的ロケーション」や、修繕やファッションコーディネートなどの「付加サービス」もあるだろう。また、「評判」や「歴史」といったものも、その製品独自の差別化要因になるはずだ。
集中戦略(ニッチ戦略)
コスト・リーダーシップ戦略で勝者となれるのは、基本的にその市場で1つの製品だし、差別化戦略は顧客にとって価値のある差別化である必要があるため、簡単なことではない。(例えば、「このTシャツは競合のTシャツより、裾が1cm長いので差別化できています」というのは、顧客がその差異に価値を感じなければ差別化とは言えない)。
その場合に残された選択肢としては、一定のニッチな分野に絞ることで、利益を確保して生き残る、という戦略がある。それが集中戦略(ニッチ戦略)だ。周りにたくさんTシャツ屋さんがあって差別化も低価格戦略も難しい場合、例えば、「子供専用のTシャツ屋さん」というようにビジネスの分野をグッと絞るという選択肢があるかもしれない。
その場合、ただ、提供する分野の製品を絞るということではなく、それによってオペレーションコストが下がって店舗の運営が効率化したり、子供専用のTシャツであれば「品揃え」面で差別化できたり、または提供価値が具体的になるので顧客に見つけてもらえやすくなってマーケティング費用が下がったりする、ということに価値があるのだ。そういった意味では、この集中戦略は、結果的にコスト・リーダーシップ戦略と製品差別化戦略との併せ技という側面もある。
まとめ
ビジネスが生き残るための戦略は「コスト・リーダーシップ戦略」「 製品差別化戦略」「 集中戦略(ニッチ戦略)」の3つである。