なんとなく、仕事においては目的・ゴールを決めて、それに必要な材料を集めて進めていくという考え方が普遍的な正解のように感じていた。しかし、必ずしもそれが正解でないことを知った。
MBAの起業家論の科目で学んだエフェクチューエションという考え方。これがとても面白かったので紹介したい。(参考:サラス・サラスバシー『エフェクチュエーション』)
"Causation"は目的が起点
ビジネスを起こすにあたって、CausationとEffectuationという2つの考え方がある。Causationとは、まず目標を決めて、その時手元にあるリソースを基に、目標に達する道筋を決める考え方。トップダウン型だ。
"Effectuation"は手段が起点
一方、Effectuationは、手元にある利用可能な手段を出発点として、その時の流れで目標が生まれてくるという考え方で、ボトムアップ型。経営学の世界では、この「手元にある利用可能な手段(Means)から出発する」ことを、Means Drivenといったりする。
Causationの考え方は、多くの人が自然ととっているスタイルだと思うが、デメリットもある。それは、目的やゴールがどんなに素晴らしくても、そこを固定してしまうと、必要な材料が揃わないと実現できないという状況が生まれてしまうことだ。
例えば、AI技術を使って学生の勉強に役立つサービスをつくろう!という目的を設定しても、AI技術を使ってアプリケーションを開発する知識や人脈を持っていなければ、実現することはとてもハードルが高くなる。
一方で、エフェクチュエーション(Effectuation)は、「今手元にあるものを使って実現できるものを考える」というスタンス。なので、自分やチームメンバーのこれまでのスキルや経験・人脈を最大限利用してできるビジネスを考えるので、いくつも選択肢が生まれ、かつそれは実現可能性が高くなる。もちろん、全員が特殊なスキルや経験を持っているとは限らないので、いきなり革新的なものは生まれないかもしれないが、スピードは圧倒的に速くなる。
AirbnbもEffectuation
例えば、民泊で世の中を席巻しているAirbnbの創設者ジョー・ゲビアは、自分自身が偶然他人を自分の家のエアーベッドに泊めてあげた経験から、そのビジネスをスタートしている。最初からArbnbの構想があったわけではなく、自身のデザインの知見を活かして、他人同士が信頼関係をもつ仕組みをデザインすることで、このビジネスを成功させているのだ。
個人がスモールビジネスを立ち上げて自由に生きる、というエピソードが描かれているクリス・ギレボー『1万円起業』という本を以前読んだことがある。今思えば、この本の中で主張されていることも、エフェクチュエーションの考え方そのものだった。副業や個人ビジネスに興味がある方にもオススメの1冊だ。
Effectuationの使い方
自分の強み(Means)を洗い出す
最後に、このEffectuationの思考回路でビジネスプランを構想するために便利なフレームワークを紹介したい。まず、自分は何を持っているのかを以下の観点で洗い出す。
Who I am(自分は誰か、どういうバックグラウンドを持っているか)
What I know(自分が知っているのは誰か、どんな人脈があるか)
Whom I know(自分は何を知っているか、どんな知識やスキルがあるか)
アイデアを評価する
自分の強みをもとに、複数のアイデアを洗い出したら、どれを実行するのが良い選択なのか、評価してみよう。評価するには、以下のフレームワークが使えるはずだ。
Is it doable?(そのプランは技術的に実現可能か。)
Is it worth doing?(それを実現する価値はあるか。利益を生み出すのか。)
Can I do it?(それを実現するための知識やスキルはあるか。)
Do I want to do it?(それを実現する熱意はあるのか。)
もしこれらの問いにすべて"YES"と答えられるなら、あなたはそのビジネスアイデアはすぐに形にしたほうがいい。
まとめ
起業家論のEffectuationとは、自分の経験、スキル、人脈、好きなことを活かして、スモールスタートでビジネスをまずは始めてみること。