ヘアサロン業界は「個」の時代になっている。ヘアサロンというよりも、美容師個人に指名が入ることがほとんどだ。これに大きな影響を与えているのがSNS、特にインスタグラムの流行である。
インスタを日常的に使う特に若い世代は、ヘアサロン、美容室の名前で検索しない。インスタ上の写真を見て、自分の好みに合っている「美容師個人」を探し、選ぶ。ある意味で、実力の差が明確になり、競争の厳しい時代。そして、美容師個人が力を発揮する時代だ。
個性で生きる女性美容師
杉下恵里子さん(すぎしー)は、東京・外苑前の人気ヘアサロンで働く人気美容師の一人であり、僕の高校の同級生でもある。彼女もまた、自らの個性で活躍している美容師である。
Profile
杉下恵里子 Eriko Sugishita
岡山の進学高校を卒業後、美容専門学校に入学。卒業後はすぐに上京して東京にて美容師として10年以上のキャリアを積む。外苑前の美容室suburbiaに在籍。
彼女も、インスタグラムを上手く使い、カットの技術とカラーリングのセンスを多くの人にアピールしている。フォロワー数は次第に増えていき、今では4,000人を超える。彼女が手がけるお客さんのほとんどが、指名で来客するようになった。
「確かに競争が激しくて大変な仕事だけど、自分の個性が生きることはすごく面白い。」と彼女は話す。
彼女が得意とするのはカラーリング。個性的なその技術で人気を獲得している。日本人の多くは髪全体の色が均一なカラーリングを好むが、一方で、欧米人に人気なのは、あえて不均一で、むらがあり色のコントラストが生きるカラーリングである。
彼女は、美容師として働く中で、アメリカの人気美容師Lisaのスタイルに出会い、その欧米風のカラーリングの虜になった。「カラーは美容師のスキルによってこんなに変わるんだ」という感動が、カラーリングのスキルを高めるモチベーションにつながっている。
「均一なことが美しいとは限らない」
この欧米風のカラーリングに魅せられた彼女の技術は、少しずつ顧客の目にとまり、今では他社の美容師たちを相手に講演などで教えることも増えてきた。
「私は得意なカラーリングをもっともっと極めたい」
マジョリティに合わせていくことがベストだとは限らない。個性をとがらせていくことが、自信と人気を育てていく。
日本を、世界を飛び回る美容師に
彼女が描く夢がもう一つある。
美容師として活躍する中で、転勤や引っ越し、家庭の事情で行きたいヘアサロンに通えなくなるお客様を目にしてきた。本当は変わらず店舗に通って欲しいし、スタイリングしてあげたいけどできない。そんなはがゆい思いを何度も感じた。
「できることなら日本中、世界中を私が飛び回ってお客さんのところへ行きたい」
そうすれば、自分のスタイリングを求めてくれる人に、いつでも喜んでもらえる。そして、いろいろな場所で仕事をすることは、世界中のお客さんのニーズ、トレンドを知り、美容師としての仕事の質をもっと上げることになると考えている。
さらに、現在はセミナーの講師としてカラーリングを教えることもある。その講師としての仕事も、日本中で、世界中でできるようになることを目指したい。そう語る。
「美容師という仕事は、とてもハードだし、給料だって待遇だって今はよくない。若くして辞めてしまう人も多い。でも、自分の技術で直接人の人生を変えられるこの素晴らしい仕事を、目指す若い子が1人でも増えたら嬉しいと思う。目標にされるような存在に自分もなりたい」
すぎしーが日本を、世界を飛び回る美容師になる日は近い。新しい働き方を創り出すのは、いつだって想いの強い人だ。