山口絵理子さんの「裸でも生きる」を読んでまた考えたこと。
山口さんが25歳という若さで、バングラディッシュで創業したマザーハウスの魅力は、昔ながらの言葉で言うと、「三方良し」の商売。「三方良し」とは、「買い手良し」「売り手良し」「世間良し」つまり、企業と顧客と社会に価値があるということだ。
買い手良し
マザーハウスの理念は「途上国から世界に通用するブランドを作る」。「支援するために途上国の商品を買う」のではなく、「単純にバッグとして魅力的だから買う」と先進国でも言われることをモットーとしている。僕自身、店頭で商品を見たこともあるが、普通に欲しくなる優れたデザイン性がある商品ばかりだった。次にバッグを買う時にはマザーハウスにしようと思っているくらいだ。これは、買い手に十分に価値を提供しているということだ。
売り手良し
マザーハウスは上場企業ではないため、詳細の財務データは公開されていない。しかし、官報のデータによると、2017年3月の冬期純利益は7,700万円。仮に純利益率を2%とおくと、売上高は38.5億円。創業から10年あまりの企業としてはかなりの利益を上げ、成長していると言える。
世間良し
マザーハウスのビジネスは、この3点目が最も強い。まず、バングラディッシュ現地の直営工場で、現地の素材ジュードをメインで使い、現地の伝統的な手仕事を活かしながらバッグを生産している。マザーハウスの売上が、現地の地域社会に還元されているということだ。さらに、従業員にとっても、現地ではトップレベルの給与水準、福利厚生、保険制度などがある。
山口さんの創業時の「支援ではなく、ビジネスで途上国の成長に貢献する」という想いが見事に反映されている。
進化した資本主義
この、マザーハウスの三方良しの商売は、世界的な経営学者マイケル・ポーターが述べる「進化した資本主義」を生み出していると言えるだろう。ポーターは論文「共通価値の戦略」の中で、「進化した資本主義、すなわち社会目的に従った資本主義が必要とされている。ただしその目的は、慈善からではなく、競争や経済的価値の創造に関する深い理解から生まれてくるべきである。」と述べている。
慈善活動ではなく、自己持続性のある企業活動で、利益と社会貢献を合致させる。そんな最先端のビジネスの姿が、マザーハウスにはあるようだ。